島尾敏雄さんによる群像新人文学賞の選評
選後感 - 島尾敏雄
・・・・・・ところで最後に村上春樹さんの『風の歌を聴け』が残ってしまったが、そのハイカラでスマートな軽さにまず私の肩の凝りのほぐれたことを言っておこう。しゃれたTシャツの略画まで挿入されていた。実は今何が書いてあったのか思い出せないのだが、筋の展開も登場人物の行動や会話もアメリカのどこかの町の出来事(否それを描いたような小説)のようであった。そこのところがちょっと気になったが、他の四人の選考委員がそろって入選に傾き、私もそのことに納得したのだった。