村上春樹新聞

『ノルウェイの森』の赤と緑

『ノルウェイの森』の赤と緑

村上春樹のベストセラー小説『ノルウェイの森』。この『ノルウェイの森』の装丁に使われている赤と緑にはいくつかの説があります。
と言っても、3つしかないんだけど。

1つ目はクリスマスカラー。
『ノルウェイの森』の出版された時期がクリスマスの少し前だったので、クリスマスでよく見かける赤と緑の色に合わせた、という説。
その当時、恋愛小説ブームというブームがあって、本の帯には「100%の恋愛小説」といコピーを載せたりして、つまりマーケティング的観点からこういう装丁になったというもの。
でも、これについては村上春樹本人が『そうだ、村上さんに聞いてみよう・・・』の中で否定しています。加えて、恋愛小説ブーブの時間的流れについても説明していて、その3つの時系列がこうです。

  1. 「100%の恋愛小説」というコピーを載せて『ノルウェイの森』が発売
  2. 『ノルウェイの森』が大ヒット!
  3.  恋愛小説ブーム到来

2つ目は『ノルウェイの森』という物語を赤と緑によって表現している、という説。

これについて村上春樹は肯定も否定もしていないけれど、何か違うような気がしませんか?
主人公のワタナベ君が燃え尽きた(それも真っ赤に燃え尽きた)とは思えないし、ワタナベ君が燃え尽きていないとなると緑に出会って立ち直るという考えも成立しない訳だし。
この2つの説については、『そうだ、村上さんに聞いてみよう・・・』の「大疑問65」に詳しく載っているので、もし気になったら読んでみてください。

で、3つ目の説。それは、

この説は僕の知る限りどの本にも載っていません。というのは、『ノルウェイの森』と短編『螢』を読んでいて僕がこう思っただけなので。
『ノルウェイの森』の赤がN360に、緑がビリヤード台に見えてきたりしませんか?

エッセイ『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』の中で、高校時代に亡くなった友人について村上春樹が少し触れています。僕はこの友人が『ノルウェイの森』のキズキのモデルであるような気がしなくもなくて、その友人の死にまつわる何かが『ノルウェイの森』の赤と緑に深く結びついているような感じています。

そういえば『羊をめぐる冒険』の物語中でも、赤と緑って描かれていますよね。