『中国行きのスロウ・ボート』と『中国行きのスロウ・ボート』

『中国行きのスロウ・ボート』は『1973年のピンボール』の後に書かれた、村上春樹にとって初めての短篇。

港町の小学校で出会う中国人教師
上京した東京で出会う中国人の女子大生
青山通りの喫茶店で出会う中国人の同級生
主人公と三人の中国人による物語。

この短篇『中国行きのスロウ・ボート』には単行本『中国行きのスロウ・ボート』に収められた『中国行きのスロウ・ボート』と作品集『村上春樹全作品1979~1989(3)短編集 I 』に収められた『中国行きのスロウ・ボート』がある。
そして、両者には弱冠の違いがある。

『中国行きのスロウ・ボート』(作品集)は、『中国行きのスロウ・ボート』(単行本)に比べて、細部がより丁寧に表現されている様な気がする。
その分、文体が洗練され(過ぎ)てしまって、『中国行きのスロウ・ボート』(単行本)が醸し出す70年代的な擦り減った雰囲気が、『中国行きのスロウ・ボート』(作品集)の方は幾分、後退している様にも感じる。

「全集収録にあたって中盤以降にかなり手を入れた」
と、村上春樹本人にそう言われたら、こっち(読者)としたら読まない訳にはいかない。