吉行淳之介さんによる谷崎潤一郎賞の選評

感想 – 吉行淳之介

・・・・・・『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(村上春樹)についていえば、これも手応え十分であった。ただ、読む者が受信しようとしていると、村上放送は多種類の電波を同時に送って寄越すことがあって、そのため電波同士が妨害し合いしばしば受信不能になるという欠点がある。
交互に置かれた二つの話のそれぞれの主人公「私」と「僕」が、やがて交叉しはじめ、「私」イコール「僕」と分り、二つの世界の物語は同時進行して、最後に「私」も「僕」も消えてしまう、という構成は面白い。ただ、この二つの世界は、描かれている文体は違うが味わいは似通っている。そのためか、作品が必要以上の長さに感じられた。この作品の受賞に、私はやや消極的であった。

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