佐々木基一さんによる群像新人文学賞の選評

軽くて軽薄ならず – 佐々木基一

この作品を入選にしたのは、第一にすらすら読めて、後味が爽やかだったからである。アメリカの現代小説にこういうふうなものがたくさんあると丸谷才一さんが云っていたが、わたしはほとんど読んでいない。ただ、ポップアートみたいな印象を受けた。しかもそれがたんに流行を追うというのでなく、かなり身についたものとしてでてきているように感じた。非常に軽い書き方だが、これはかなり意識的に作られた文体で、したがって、軽くて軽薄ならず、シャレていてキザならずといった作品になっているところがいいと思った。ポップアートを現代美術の一ジャンルとして認めるのと同様に、こういう文学にも存在権を認めていいだろうとわたしは思った。こういう作品はかなり手間ひまかけて作らないと、軽くて軽薄になるおそれがあることに、作者が留意してくれることを望む。

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