箱根駅伝で流れた、村上春樹の執筆によるサッポロビールのCM

箱根駅伝で流れた、村上春樹の執筆によるサッポロビールのCM

2012年の箱根駅伝で流れた、村上春樹執筆、是枝裕和監督、仲間由紀恵の語りによるサッポロビールのCM『走ることについて語ること』。

走ることについて語ること 第1話

痛みは避けられない、でも苦しみは自分次第だ

ある時、そんな言葉を憶えた。
そして、長距離レースを走るたびに、
頭の中でその文句を繰り返すようになった。

きついのは当たり前
でも、それをどんな風に苦しむかは自分で選びとれる。
Suffering is optional.
へこたれるも、へこたれないも、こちら次第。

苦しいというのはつまり、僕らがオプションを手にしているということなんだ。

走ることについて語ること 第2話

僕やあなたのような普通のランナーにとって
レースで勝ったか負けたか
そんなのはたいした問題じゃない。

自分の掲げた基準をクリアできたかどうか
それが何よりも重要になる。

ランナーはあなた自身に委ねられている。

自分の中でしか納得できない物事のために
他人にはうまく説明できない物事のために
長い時間制をとってしか表せない物事のために
僕らはひたすら走り、また、こうして小説を書く。

走ることについて語ること 第3話

やっとゴールのマラトン村に辿り着く。
炎天下の42キロを走り終えた達成感なんてどこにもない。
頭にあるのは、ああ、もうこれ以上走らなくてもいいんだ
ということだけ。

村のカフェで一息つき
冷えたビールを心ゆくまで飲む。
ビールはもちろんうまい。
でも、僕が走りながら切々と想像していたビールほどうまくはない。
正気を失った人間の抱く幻想くらい美しいものは
この現実世界のどこにも存在しない。

走ることについて語ること 第4話

走っているときに頭に浮かぶ考えは空の雲に似ている。
色んな形の色んな大きさの雲。
それらはやって来ては去ってゆく。
でも、空はあくまで空のままだ。
雲はただの客人に過ぎない。
通り過ぎ、消えてゆくものだ。

暑い日には暑さについて考える。
寒い日には寒さについて考える。
つらいことがあった日には
いつもより少し長く、少しきつく、一周余分に走ることにしている。
そして、あとにただ空だけを残す。

執筆:村上春樹
監督:是枝裕和
語り:仲間由紀恵
音楽:明星/Akeboshi

【外部サイト】
サッポロビール2012年企業広告特別篇について
~村上春樹さんが初めてCMナレーションを執筆、監督は是枝裕和さん~
http://www.sapporobeer.jp/