丹羽文雄さんによる谷崎潤一郎賞の選評

今年の感想 – 丹羽文雄

今年の谷崎賞の候補作品を私は軽井沢で読んだ。一篇だけ感動をおぼえたのがあった。最後の選考が行われる日の四日前に、その作品がある社の今年度の文学賞に決定したという事実を知らされた。いろんな文学賞が行われている状態では、そういうことは十分ありうることであった。谷崎賞の最後の選考会で、その作品を候補作品から外すということがきまった。今年は谷崎賞がないと私は思った。
しかし中央公論社としては、当選作品のないことは、いろいろと不都合もあろうとは、十分に想像された。多少でも好意をもった作品をむりに推薦するということも考えたが、やはり強く主張するわけにはいかなかった。
日野啓三君には、前々から期待をかけていたが、今回はつよく推すわけにはいかなかった。が、本人の力量は十分に感じられた。それが私にはうれしかった。次作につよく期待をかけることが出来るからである。

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