村上春樹新聞

イラストレーターの安西水丸さん逝く

イラストレーターの安西水丸さん逝く

世田谷文学館|イラストレーター安西水丸展|2021年4月24日~8月31日

村上春樹との名コンビで知られるイラストレーターの安西水丸さんが亡くなった。

3、4年もしたら、村上春樹と安西水丸さんのゆる〜い本がまた出るだろうと気楽に考えていたけれど、ふたりの新しい本がもう読めないと思うととても寂しい。

安西水丸さんの一般的なポジションは
「村上春樹の本に挿絵を描いている人」
ということになる(と思う)。その点では、村上作品の共著者のうちのひとり。
でも、村上作品にとって安西水丸さんはオンリーワンの存在であると、村上作品の読者の多くが感じているのでは。

村上春樹と安西水丸さんのコンビって、いったいどれくらいの本を出したんだろう?
ちょっと気になったので、思いつく限りで挙げてみました。
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イラストとは別に、安西水丸さんの本名である渡辺昇(ワタナベノボル)と同姓同名の人物が出ている村上作品もあったりする。
これも思いつく限りで。

もし、安西水丸さんのイラストが存在しなかったら、村上作品の印象は今とは少し違っていたような気がする。

エッセイ『村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた』によれば、安西水丸さんの故郷である千葉県千倉町(現在の南房総市)にある南房千倉大橋という橋には、安西水丸さんのタイル絵が2枚はめこんであるそうです。
でも、住民の中には絵心がない人もいて、「どれが安西先生の絵だか、子供の絵だか、ちょっとわからねえな」と言う人もいたんだとか。

そういう僕も、安西水丸さんのイラストを初めて見た時は「いくら何でも、この絵はヒドい!」と、千倉町の住民と似たような感想を持っていた。
でも、時は流れ、安西水丸さんのイラストは変わらかったけれど、僕の見方は変化した。

僕がどこまで安西水丸さんの絵を理解できているのかはわからないけど、イラストレーターの和田誠さんの言葉にうなずける程には、安西水丸さんの絵を鑑賞できるようになった。
以下は、安西水丸さんと和田誠さんの共著『青豆とうふ』に載っている、和田誠さんのまえがきです。

ぼくは安西水丸さんのファンです。同業者という点ではぼくの方が少しばかり先輩ですけど、こういうことは年齢とは関係がありません。いいものはいい、面白いものは面白い、美しいものは美しい。水丸さんの絵は、どれにも該当するんです。
そして彼の絵はのほほんとしている。一見、手を抜いているようにさえ見える。この「一見」というところがミソなんです。実は手を抜いているどころか周到に計算された「のほのん」であって、彼の作るものはふんわりと、あるいはじわっと、人の心に入ってきます。その上忘れられない何かを植えつける。油断がならない。真似しようとしても真似できるものではありません。

繰り返しになるけれど、村上春樹&安西水丸コンビの次回作がもう出版されないことを本当に残念に思う。
でも、この二人が残した本はけっこうたくさんあるし、何度も読み返すには十分な量でもある。

安西水丸さん、ご冥福をお祈りします。

安西水丸さんの好きなスノードームの挿絵
『村上朝日堂超短篇小説 夜のくもざる』の挿絵

『象工場のハッピーエンド』の挿絵
『象工場のハッピーエンド』の挿絵

『ランゲルハンス島の午後』の挿絵
『ランゲルハンス島の午後』の挿絵

女「わたし今、目まいしたわ」安西水丸さん「それって回文」
『「そうだ、村上さんに聞いてみよう」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける282の大疑問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか?』の挿絵

【安西水丸さんの本】